虚血性心疾患:狭心症と心筋梗塞についてのご質問
A. 心臓が休みなく動くには、心臓自体に酸素や栄養を補給する必要があります。そのための血液を送る血管:動脈が、
冠動脈です。
正常の冠動脈の断面は、下図のように、きれいな三層構造となっています。
ここに動脈硬化が起きると、コレステロールやその他の
カスが溜まり、
内腔
が小さくなります。
この状態を狭窄といいます。狭窄ができると、流れる血液の量が減ります。安静時の心臓には十分でも、運動時や労作時、
心臓がもっと働かねばならないとき、血液が不足します。まず最初は、その血管から栄養されている部分の心臓の筋肉が
青くなって動かなくなります。
これは本人も見ることはできませんので、この段階では気づきません。さらにひどくなると、心電図に変化が現れます。
しかし、この時点でも、全く症状はありません。
さらにひどくなって初めて、「胸が締め付けられるように痛む」などの症状が出ることがあります。症状が全くない場合も大変多いのです。
この狭窄は、薬では治りませんので、風船治療(経皮的冠動脈形成術(PTCA))か手術(冠動脈バイパス術)が必要となります。
他に、特殊なタイプとして、普段は狭窄がなく、血液の流れは正常なのに、
様々な刺激
によって、血管が
縮こまって
血液の流れが悪くなる狭心症もあります。これを冠攣縮性狭心症といいます。このタイプは禁煙と薬で十分に治療が可能です。
A. 「胸が締め付けられる」「圧迫感」「のどに棒を突っ込まれた様」等様々です。強さも人それぞれで、
意外にも「大して痛くない」「がまんできないほどではない」という患者様も多く見られます。位置としては
胸の真中か、左、時にみぞおち
に感じます。狭心症の場合は胸の奥に感じることが多いとされています。労作時や運動時に起こった場合、安静にて数分から十数分で
よくなります。
安静時に起きる場合、「夜寝ていて、胸が痛くて起きる」「タバコを吸うと痛む」などが典型的です。
この場合にも30分以内に自然に改善します。
特に、頻度、強度が悪化している時、冷汗:あぶら汗を伴う時は要注意です。心筋梗塞になる予兆であることも多いので、
おさまってもできるだけ早く、専門医の診察を受けましょう。
※逆に心配しなくてもよい症状として「ドキドキ」「ドッキン、ドッキン(脈が飛ぶ)」
「チクチク」「ズキズキ」「刺す様に痛い」「わきの下がきりきり痛む」「左肩だけ痛い」「右胸が痛い」「胸の上の方が痛い」「胸の表面が痛い」などが
あげられます。
A. 上記のように、狭心症は血管だけの病気です。
血液が不足するのは一時的なものなので、心臓の筋肉:心筋には問題ありません。
しかし、狭窄や攣縮を起こしている部分に、下図の様に突然血の塊:血栓が付き、冠動脈がつまる(閉塞する)と、その血管から栄養をもらっている心筋は、
だめになって(腐って)しまいます。血管だけでなく、
心筋もやられた状態を、心筋梗塞といいます(発症後1ヶ月までを急性心筋梗塞と言います)。
このような粥腫の破綻から血栓による閉塞までは、ほとんど一瞬といってよいほどの時間で起きます。仕事のストレスが非常に強く、無理をしながら、タバコを
吸った時突然とか、深酒をして未明に突然など、
ほとんどの場合突然起きます。
しかも半数以上の患者様では、
前触れなく起きます。
症状は一般的に激烈で冷汗を伴う
胸の痛み
とされています。しかし、全く症状なく、ただ「ちょっと調子が悪い」というだけの患者様もいます。
他、特殊な場合もあります。狭心症と急性心筋梗塞の中間とも言える状態で、
不安定狭心症といいます。
「数日前から胸が痛いという発作が起き」、「徐々に頻度や強さが悪化している」「あぶら汗を伴うようになった」、
または「以前より軽い労作で起きるようになった」という症状です。
この場合、放置すると一週間以内に約半数の患者様が急性心筋梗塞になると言われています。
できるだけ早く、専門医に受診
しなくてはなりません。特に24時間以内に、安静時に発作があった場合は、いくら今、症状がなくても、心電図に異常がなくても、
即刻入院が必要です。
尚、発症後時間が経ち、安定化した状態を、陳旧性心筋梗塞と言います。
Q. 急性心筋梗塞は怖い病気だと聞きますが、どのように怖い病気なのでしょうか?
A. まず、他の病気に比べ、
病院にたどり着く前に亡くなる割合が高い
という点です。つまり、発症してから救急車を呼ぶのではすでに遅いという患者様の割合が非常に高いということです。
しかも、前触れがないことが半分以上とされています。急性心筋梗塞の10数パーセントは、「初めての症状」=「死亡」である
と言われています。この場合、「突然死」ということになります。
うまく病院までたどり着けたとしてもそこからが問題です。点滴と安静だけで様子をみるという医療機関もまだまだ多く、その場合、
合併症により10%以上の患者様が
亡くなります。
血栓溶解療法が行われれば、
死亡率は6-7%に下がります。しかし、その成功率(再疎通率)は7、8割と言われ、成功しなかった場合は、予後不良となります。また、
この方法を適応する場合、
様々な制約があり、
誰でもが受けられるというわけではありません。
最も良い治療方法は、即座に心臓カテーテル検査を施行し、風船や、
ステントを用いて
閉塞部をきれいにしてしまう方法とされています。これを受ければ死亡率は3-4%に低下すると言われます。しかし、この治療を
24時間、迅速に受けられる医療機関は非常に少ないことが難点です。
このように最良の治療を行っても、非常に高い死亡率です。しかも、壊死に陥った部分は一生回復しないのが普通ですから、
適切な治療が受けられず、壊死の範囲が大きいと、心機能は低下します。退院しても日常生活にも支障を来たしたり、
ひどいときには寝たきりになります。特に初期治療がうまくいかず、血管が閉塞したままになっていると、
退院後も数年にわたって、徐々に心機能が落ちて
、心不全を繰り返しながら、亡くなるなどといった悲劇的結末もあり得るのです。
A. 一般に、ドックや健康診断などの安静時心電図では、狭心症の診断は、ほとんど不可能です。 狭心症であっても、安静時の心電図は正常であることが多いためです。次節のような精密検査が必要ですが、ドックや健康診断の項目には 入っていないことがほとんどです。 また、ほとんどの施設では、コンピューターや専門外の医師が心電図の判定を行っていますので、 狭心症を疑う微妙な変化は見逃されてしまう ことが多いのも事実です。
Q. 症状がない狭心症を発見するにはどうしたら良いでしょうか?
A. 上記の様に、狭心症でも症状がない場合が多いわけですから、
そのような症状のない狭心症をどうやって発見するかが非常に重要な課題となります。また、上記の様にドックや健康診断でも、なかなか
わからないので、厄介です。かと言って全員に精密検査はできませんし、無駄が多くなります。そこで、症状がなくても以下に当てはまる方は
心臓精密検査を受けた方が良いと思われます。
・ 年齢:
男性40歳以上、
女性60歳以上の方で、
・ 次のような危険因子を持つ方。特に、
複数の危険因子を持つ方。
喫煙、
高血圧、
高脂血症、
糖尿病、
家族歴など。
その場合の診断方法として、
運動負荷検査
や
24時間心電図(ホルター心電図)、
さらに
シンチグラフィー
などがあります。
※高血圧、高脂血症、糖尿病にて通院中の患者様は、定期的(年1回)の心臓精密検査が必要です。治療にて病状が安定していても、
狭心症となることも多く、
意識的に早期発見
に心がける必要があります。
特に糖尿病の患者様の場合、最も命に関わる合併症は、心筋梗塞ですから、眼底を定期的に検査する以上に、
定期的な心臓の精密検査が必要となります。
A. 狭心症の治療の第一歩は、冠動脈の状態をしっかりと調べることです。
冠動脈の状態によって、同じ狭心症でも治療方法は大きく異なります。冠動脈の状態を正確に診断するためには、
心臓カテーテル検査が必要です。
上記の様に冠動脈に狭窄がある場合の基本的な治療法は、
いわゆる風船治療(PTCAまたはPCI)
または
バイパス手術
です。薬物療法はあくまでも
補助療法
です。上記の特殊なタイプの狭心症:攣縮による狭心症のみが、薬物療法が
第一選択
となります。
心臓カテーテル検査なしに治療をすると、かなりの割合で
不適切な治療
に終わってしまいます。